「自分らしさ表現できる」
生物学的性(セックス)と性自認(ジェンダー・アイデンティティー)が一致しないことから違和感を覚える「トランスジェンダー」の人をテーマにした演劇が5月3日から5日の3日間、武蔵野市の「武蔵野芸能劇場」で開かれる。公演にはトランスジェンダーの当事者らも参加することになっており、全国でも初の試みが注目を集めている。
公演の呼びかけ人である役者の月嶋紫乃さんは、平成8年に埼玉医大の倫理委員会が出した性別再指定(いわゆる性転換)手術を認める答申をきっかけにトランスジェンダーをテーマにした舞台を作りたいと思うようになった。一年前に出演者を募集し、当事者を含むキャストやスタッフらと「トランス☆プロジェクト」を旗揚げした。
トランスジェンダーとは「性別違和」を感じている人を意味するが、その中でも特に強く違和感を覚え、手術を望む人をトランスセクシャル(性同一性障害)と呼ぶ。トランスジェンダーの人たちは国内にも数千人から数万人いるとみられ、今回の公演では、当事者以外の多くの人たちにもその存在と現状を知ってもらうことが目的になっている。
脚本では、自分の体を女性から男性に変えていきたいと望むトランスセクシャルを主人公に描き、愛憎渦巻く人間模様をユーモラスに仕立て上げた。キャストやスタッフにはトランスジェンダーの当事者とプロの劇団員らが加わり、共同で企画段階から作業を進めてきた。当事者の中には台本を読むことによって自分自身の辛い経験を思い出し練習に参加できなくなってしまった人もいるなど、さまざまな困難もあったという。
キャストの一人で、女性から男性に体を変えることを望んでいる当事者(22)は「今まで自分のことをずっと隠してきたが、自分らしさを表現できる場所ができた。稽古は大変だけど、ありのままの自分でいられるのがうれしい」と公演への意欲を見せる。
月嶋さんは「一言でトランスジェンダーといっても多様な人たちだということを表現したい。今回の公演が終わったら、また違ったストーリーでトランスジェンダーをテーマに公演を続けたい」と話している。